1977年に開かれた「NGO被爆問題国際シンポジウム」では 、原爆が人間に与えた被害の全体像を解明しつつ、その特徴を次の5点に要約しています


瞬間性〕 奇襲攻撃のため被害を予知できず、その巨大なエネルギーと放射能障害への対応措置が不可能なような瞬間的破壊のため、人々は日常生活の状態で殺されました。

(左の写真は、爆心地より約1キロの坂本町山王神社近くの民家にあったもの。
『長崎原爆の記録』より)



〔無差別性〕、戦闘員・非戦闘員、老幼の区別なく、大量・無差別の殺傷を自己目的とする、最も苛酷な”戦略爆撃”でした。

 

(上の写真は、焼けた婦人のモンペ。爆心より2500メートル離れた電車停留所にたっていた女性のもの。背中は放射線を受けて焼け、正面は少しも焼けていない。『ヒロシマ・ナガサキ原爆写真』より)


〔根絶性〕 その被害は人間、生物、環境の全体に及び、すべての生物とその生存条件である生物的、社会的環境が徹底的に破壊され、世代構成への影響も深刻です。


〔全面性〕 人間の健康、生活・精神の全体にわたる被害、全面的な人間否定が行われました。肉親や同僚の叫びを背にしながら生き残ったことへの後ろめたさ、被爆者ゆえの不当な差別、病気と貧困の悪循環がそうです。


〔持続・拡大性〕 被爆から現在および将来にわたりひきつづく被害、慢性的な放射能障害、遺伝への危惧など、「いのち・くらし・こころ」の全体にわたる不安は、被爆者の老齢化、医療や福祉行政の後退とともに、いっそう拡大しつつあるとさえ言えます。


もちろん、これらの特徴は相互に関連しあっています。人類最初の核戦争、原爆攻撃によって起こされたこれらの被害は、人体への影響が熱線・爆風・放射能の複合的作用によるように、人間と自然の全体に対する複合的な被害として、未来の核 戦争における人類絶滅さえ予想させずにはいません。